小さな恋 大きな恋


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しばらくして先生が保健室から帰って来た。皆リョーマの様子が気になったが先生は「大丈夫です。今は保健室で休んでいます。」とし
か教えてくれなかった。

体育の授業が終わりリョーマの所へ行こうとした手塚のもとに先生がやってきた。
「手塚君、悪いんだけど鞄を越前さんのところに持って行ってくれないかしら。」
「はい。わかりました。」
返事をすると走って校舎の中へ入って急いで着替えた。



リョーマの鞄を持って保健室へ行き、扉を開けようとすると中から話声が聞こえてきた。
「本当ごめんな。」
「ううん、いいよ。」
クラスメイトの男の子とリョーマの声だった。
「でも俺・・・。」
「気にしないでよ、私もむきになっちゃったし。お母さんに今日は走っちゃダメだって言われてたのに。

「ごめん。俺が越前を走らせたんだ。本当反省してる。」
「私、気にしてないから。」
「・・・・・・俺さ、越前と話したかったんだ。」
「え・・・?」
急に男の子が真剣になったからリョーマも、外にいる手塚も驚いた。
「転校してきた時、かわいいなと思ったんだ。話したいと思ったんだ。でも、越前は手塚と知り合いで不二とか乾とか菊丸とかと仲良かっ
たじゃないか。ずっと話したかったけどあいつらがいて話せなかったから意地悪したらこっち向いてくれるかと思ったんだ。」
「そうだったの?」
「うん・・・。でも、今は違うんだ。これからも越前と話したいとは思ってるけど・・・。俺、越前が好きなんだ。」
「えっ?!」
「いつのまにか好きになってたんだ。」
「・・・・ごめんね。私、好きな人がいるの。」
「・・・・・・そっか。」
「これからも友達じゃダメ?」
「友達でいてくれるのか?」
「もちろんだよ。よろしくね。」
「ああ、ありがとう。じゃあ、俺教室戻るな。」
「うん。じゃあね」
そして、男の子は保健室から出て行った。男の子が出て行ったかと思えば入れ違いに手塚が入ってきた。
「あ、国光。」
リョーマはちょっとびっくりした風に言った。
「鞄持ってきたぞ。大丈夫か?」
「うん。寝たらちょっとましになった。」
「もう無茶しないでくれ。」
「はーい。」
「・・・・・・・・・。」
「どうしたの?」
急に黙った手塚に不思議そうに尋ねた。
「・・・・リョーマ。リョーマの好きな人は俺も知ってる奴か?」
「え・・・あ・・・聞いてたの?」
「ごめん。保健室に入ろうとしたらあいつがいきなり告白しだしてしまったんだ。」
「そっか。うん、私の好きな人は国光が一番良く知ってる人だよ。」
「俺が一番知ってる人?」
「うん。」
「・・・そうか・・・。」
そしてまた黙って考え込んでしまったかと思うと、
「リョーマ、俺はリョーマが好きだ。」
「えっ!!本当?」
「例えリョーマが違う奴のことが好きでも俺はリョーマが好きだ。でも・・・。」
「ちょ、ちょっと待って!」
「何だ?」
「国光何か勘違いしてない?」
「何をだ?」
「私の好きな人。」
「ああ、不二か乾か菊丸だろ?」
「ちっがーう!!周助達はお友達!!私が好きなのは国光だよ。」
「それは本当か?」
「うん。なんで私が嘘言わないといけないの。」
「そうか。」
「嬉い?」
「ああ。」
「でもね、私、3日後にアメリカに行くの?」
「はっ?!何故だ?!そんな話聞いてないぞ。」
「だって言ってないもの。お母さんがね、私がどうしても此処にいたいのならお母さんは心配だけど彩菜さんに言って国光のとこにいさ
してもらえるようにするよって言ってたんだけど・・・。」
「それでいいじゃないか。」
「ううん。ダメなの。」
「どうしてだ?」
「今日みたいに倒れたりしたら国光や彩菜さん達に迷惑がかかっちゃうし、やっぱりお母さん達と一緒にいたいの。」
「・・・・・・・そうか。俺は迷惑だなんて思ってないけど、家族と一緒にいたいもんな。」
「ごめんね。」
「いや、いい。いつ帰って来るんだ?」
「わかんない。お母さんのお仕事次第だって。だからいつかわかんないんだって。」
「そうか・・・。じゃあ電話する・・・。」
「ダメ。電話も手紙のダメ。」
「何故だ?」
「寂しくなっちゃって会いたくなるから。」
「・・・そうだな・・・・。」
「でも、絶対帰って来るから!!」
「ああ、待ってる。いつか絶対帰って来てくれ。」
「うん!!」





そして3日後、リョーマはアメリカへと行ってしまった。




いつか必ず帰って来ることを約束して・・・。


END